電力自由化に潜む天空の蜂

ちょうど「天空の蜂」という映画のDVDを観始めている時だった。

「天空の蜂」は東野圭吾作の書き下ろし長編クライシスサスペンス小説で、軍用の大型ヘリコプター「ビッグB」がテロリストに奪われ、大量の爆発物を搭載したままテロリストの遠隔操縦により高速増殖炉「新陽」の上空に達してしてそのまま停止状態に。

天空の蜂

そして日本政府に対して現在稼働している原発を、全て停止するよう要求する。
そうでないと大型ヘリを「新陽」に墜落させると警告する。
しかも「ビッグB」の機内には子供が乗っているという危機的な状況の中、子供の救出と「ビッグB」が燃料切れで原発に向かって墜落することを回避するための葛藤を描いた作品だ。

天空の蜂DVD


私にかかって来た電話は東京電力からで、新プラン説明のために3分程時間を貰えないかということだった。
そういえば、4月からの電力自由化のためか、最近東京電力を始め数社から郵便物が届いている。
中を開封していなかったので、DVDを見ながら説明を聞くのもよしとしてOKと答えた。

説明では新プランでは年間4000円程電気料金が下がること、商品券等のサービスが付くとのことであった。
そこで聞いたのだが、何故そういうサービスをもっと早く検討しなかったのか?
当然、電力自由化に向けての他者との競合を意識してのことで間違いないのだろうが、何の意思表示もせずに黙っていたら新プランの恩恵を受けることもなくそのまま継続されるという説明であった。

まあ、そのための郵送物の発送であり、今回の電話だったのであろうが・・・・
利用者としては1円でも安い方がいいのは当然である。
だから、東京電力を含めフラットな気持で比較検討はすると答えた。
そして質問を投げかけた。
「東京電力が供給する電力に原発によるものが含まれるのか?」と~

電話の相手は若い女性であったが、確認しますので少しお時間をくださいと保留となり、しばし時間が経過した。
そして「大変お待たせしました」と語り始め、原発の分が多少含まれると言う。
そこで私が、今稼働しているのは川内原発、高浜原発だけの筈で、東京電力の管轄では原発は稼働していない筈だがと再度問うと、まだ確認しますので少しお時間をとなってしまった。

そして三度電話に出た彼女の口からは「やはり原発の分が多少含まれる」と言う。
それは今停止中の原発を再稼動することを前提としているのか・・・・言葉に詰まっている彼女をそれ以上詰問する気にはならなかった。
私の質問に明確に答えられないことを盛んに謝罪していたが、おそらく東京電力の末端の社員なのか、或いは委託先の担当者なのかも知れない。

私は最後に、電気代が下がる越したことはなく確かに重要な選択要件だ。だが、それ以上に原発での発電を望まないのが最大の選択肢である利用者が大勢いることを忘れてはならない。
史上最大の原発事故を起こした東電はそれを胆に銘ずる必要がある・・・・と。

なんだが最後はお説教になってしまった。
ちょうどDVDの「天空の蜂」はテロリストからの要求と原発維持願望の狭間で揺れる日本国政府や原発安全神話の脆弱さを映し出している。

しかしフクイチの事故が起こる15年以上前にこのような小説が書かれていたのは
驚きだ。
作者の原発に関する知識、洞察力、予知力には驚異的なものを禁じえない。
それと同等いやそれ以上のスペシャリストが、政府や原発関連の関係者にいなかったのであろうか。

川内原発に近い桜島が噴火。
地震国日本ではどこで地震が発生するか分からない。
そして集団的自衛権発動で、海外派兵など実施した暁にはテロリストの格好の標的になり、そうなったら国の存続が危ぶまれる状況に陥るには必至だ。

天空の蜂はフィクションではない。
実際に存在して、待ち構えているかも知れない。


スカイツリー2-5